かゆみの疾患
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、頻度の高い皮膚炎でかなりの方が聞いたことのある病名だと思います。痒みのある湿疹がほぼ左右対称な位置に生じ、良くなったり悪くなったりを繰り返し慢性に経過をするのが特徴です。
Q:原因は?
A:アトピー性皮膚炎の原因は、まだはっきりとはわかっていませんが、遺伝的な体質に、環境要因が影響して発症すると考えられています。多くの患者さんは、皮膚が乾燥しやすい素因(ドライスキン)とアトピー素因(アレルギーを起こしやすい体質)を併せもっています。
Q:治療は?
A:アトピー性皮膚炎の治療において一番大切なのは、薬物による治療です。アトピー性皮膚炎治療の外用薬としては、ステロイド*の塗り薬と免疫抑制剤の塗り薬、さらに保湿剤があります。ステロイド、免疫抑制剤の塗り薬は、炎症を強く抑える作用を有し、保湿剤は皮膚バリアを整えます。これらの薬剤を適切に使うことで、症状を早く改善し、良い状態を維持することが可能になります。
ほかに、痒みを抑えるために、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬内服を補助的に用いたり、他の治療でなかなか良くならない重症の成人患者さんでは、ステロイド薬の飲み薬やシクロスポリン(免疫抑制薬)の飲み薬を服用したりすることがあります。
どの薬をどのように組み合わせて、どのくらいの量を使うかは、医師が患者さん個々人の皮膚の状態等をよくみて判断します。塗り方、塗る場所・回数・期間などについての指示は、きちんと守りましょう。
*ステロイド恐怖症について:大病院の皮膚科で外来を行っていると、アトピー性皮膚炎を治療する上で、「ステロイド嫌いで一切外用したくない方やステロイドの使用に抵抗のある方」が、しばしばみられます。インターネットのブログやサイトでもそのような「ステロイドは悪」といった趣旨の記載をよく目にします。しかし、それらの記載の多くは誤解に基づくものです。例えば、「ステロイドを外用すると皮膚が黒くなる」や、「ステロイド外用すると皮膚が象のように固くなる」や、「ステロイドを外用すると全身の骨がボロボロになる」といった誤解を基にステロイド恐怖症になっている方がかなり多いです。もちろんステロイド外用薬は副作用がゼロではありませんが、それはどの薬も同様です。ステロイド外用に関しては症状に応じて必要な量を必要な期間だけ使い、症状が軽くなったら薬を減らしたり、弱いものに変えたりするように正しく適切に用いれば、副作用はかなり防げますので不必要に怖れたりしないでください。最も良くないのは自己流で外用方法を変えたりして、自らステロイド外用の副作用が出現しやすい環境を作ってしまうことです。
Q:新宿駅前うわじま皮膚科のアトピー治療のこだわりは?
A:当院でのアトピー治療の特徴は3つあります。
1つ目は正しい外用指導です。正しい外用治療薬が処方されていても外用の方法が適切でないため、十分な治療効果が得られていない患者さまが非常に多いと感じています。ステロイド恐怖症のある方はその克服も含めて正しい外用法と自宅でのスキンケア法を、資料等を用いて習得していただけます。
2つ目はアレルギー検査など採血検査によるアトピーの悪化要因検索や病気の勢いの評価です。客観的にアレルゲン等を採血検査で評価することにより日々の生活でのアレルゲンに対する対処法をご提案することができます。
3つ目は光線療法や免疫抑制剤内服療法などの併用です。当院が得意とする光線療法はアトピー性皮膚炎にも保険適応があります。外用に加えて光線療法を併用することでより高い治療効果が望めますし、外用を継続することが困難な方にも適しています。
また、かなり重症なアトピーの方は外用療法に加えて一時的に免疫抑制剤シクロスポリンを内服する治療法があります。シクロスポリンは効き目の良い薬ですが、安全に使用するためにはいくつか注意点がありますので免疫抑制剤の使用に慣れている医師の下で治療するのがお勧めです。
じんましん
痒みの強い、蚊に刺されたようなわずかに盛り上がったみみず腫れが数分~24時間以内にできて消えていく皮膚疾患をじんましんと言います。多くは痒みを伴いますが、チクチクとした痛みや、熱く焼けつくような痛みを生じることもあります。
Q:どんなタイプの蕁麻疹があるの?
A:経過期間で分ける分類や、誘因で分ける分類があります。期間で言えば4週間以内に治るものを急性じんましん、それ以上の期間にわたって断続的に発症するものを慢性じんましんと呼びます。
Q:原因は?
A:じんましんの原因を知りたいと外来受診される患者様も多くいらっしゃいますが、実際はじんましんの原因は、特定できないものが大部分です。急性じんましんの一部では、食べ物や内服薬、細菌やウイルスの感染などの関与を疑うものもあり、検査としては血液検査IgE RAST法、一般血液検査などを行います。しかし、慢性じんましんでは、原因が特定できないことが少なくありません。
Q:治療は?
A:じんましんの治療は、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤など内服治療が第一です。薬を内服すれば、多くの人は数日で症状が治まりますが、中途半端に治療を中断せずに医師の指示に従って内服を継続したり、徐々に減らしていくことが大切です。既にかいて傷ができてしまった患者様にはステロイド外用薬を併用することもあります。
脂漏性皮膚炎・フケ症
脂腺の多いところに生じる湿疹で、頭部や顔(特に眉間、ほうれい線などの顔の中心部)、胸背部などにできやすいのが特徴です。新生児や乳児にも見られますが、この場合は大きくなるにつれて改善することも多いです。
一方、問題なのは中高年の方の場合で、頭、顔、耳にフケがしつこく出て、痒みも伴い、とても憂うつな病気です。
Q:原因は?
A:原因としては皮脂の成分の質的異常であり、皮膚の機能の老化が関係しています。また、マラセチアというカビの一種の感染が関与することがあります。
Q:治療は?
A:脂漏性皮膚炎の治療としては、強くこすり過ぎないように気をつけながらもしっかり洗うのが基本で、そうした後にステロイド軟膏とマラセチアに効く抗真菌剤を塗ります。抗真菌剤には刺激性がありますので、より良い外用方法を説明させていただきます。
その他、ビタミン剤内服を併用することもあります。また、この疾患用のシャンプーとコンディショナーもあります。
乾癬
銀白色の鱗屑(りんせつ:皮膚の粉)を伴い、境界の明瞭な盛り上がった紅斑が全身に出ます。乾癬の患者さんの90%くらいが、この症状です(尋常性乾癬)。
Q:できやすい部位、年齢は?
A:大きさ、数、形は様々で、発疹が癒合して大きな病変を形成することもあります。好発部位は、慢性かつ機械的な刺激を受けやすい頭部、肘・膝、臀部、下腿などです。青壮年期に発症することが多いですが、幅広い年齢層にみられます。比較的欧米に多くみられる疾患ですが、近年日本での頻度も上昇してきています。
Q:症状の特徴は?
A:痒みは約半数の患者さんに見られます。爪の変形や関節炎を伴うこともあります(関節症性乾癬)。稀ながら、発疹が全身に及ぶこともあります(乾癬性紅皮症)。その他、喉が痛んだ後(扁桃炎)に雨滴状の小さな乾癬皮疹ができる滴状乾癬、全身に小さな膿疱が多発する汎発性膿疱性乾癬があります。
Q:乾癬は治らないの?
A:現時点では一度発症すると完治は難しいと考えられています。しかし、治療によって皮疹の全くない寛解状態を目指すことは可能です。もちろん再発することもありますので、いずれにしても長くお付き合いしてコントロールする疾患です。
Q:治療は?
A:ステロイド薬や活性型ビタミンD3軟膏などの外用療法を基本として、紫外線療法、免疫抑制剤などの内服療法、注射による生物学的製剤を用いた治療などがあります。これらの治療を組み合わせて寛解状態を目指します。
Q:新宿駅前うわじま皮膚科の治療の特徴は?
A:乾癬は院長の専門分野の1つですので、上記治療をうまく組み合わせたコンビネーション治療が可能です。単に外用療法といってもコツがありますし、紫外線療法などの経験数も膨大ですので、今まで外用剤を漫然と処方されていて治療効果があまり出ていない患者様がいらっしゃれば、ぜひご相談ください。
皮脂欠乏性湿疹
皮膚の皮脂分泌が低下し、乾燥をきたして角質が剥がれてしまっている状態です。皮膚表面がかさかさしていたり、白い粉をふいたようになったりし、ひび割れが生じて痒みや痛みを覚えます。頻度は高く、軽症例も含めればかなりの方が経験したことがあると思います。
Q:原因は?
A:老化や空気の乾燥、洗剤や薬剤への接触など、様々な原因によって皮膚の機能が低下して皮脂の分泌が低下し、それに伴って皮膚の乾燥が生じることが原因となります。特に冬は皮脂の分泌が低下しやすい上、湿度が低下するため、皮膚は乾燥しやすくなります。
Q:治療は?
A:治療にはまず保湿剤が処方されます。炎症がある場合は、ステロイド外用薬を用いる場合もあります。痒みが強い場合には、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の内服薬が用いられたりもします。
手湿疹
水仕事や、その他にも紙を頻繁に扱う仕事をしていると、皮脂や角質が落ちてしまいます。それよって、皮膚のバリア機能が弱まり、物をつかむなどの物理的な刺激に皮膚が過剰に反応するようになり、また刺激物が侵入しやすくなります。こうして起こるのが手湿疹です。手湿疹は、特にアレルギー体質の方に生じやすく、手湿疹の原因となる仕事を中止できない方は治りづらいものです。美容師の方や水仕事の多い飲食業、介護職、主婦の方などが特に長引きやすい印象があります。
Q:治療は?
A:手湿疹の治療の柱は、薬物療法と生活改善です。
薬物療法で用いる主な薬は、ステロイド外用剤と保湿剤です。
炎症が強い場合は、ステロイド外用剤に重ねて保湿剤を使用することで手を保護し、刺激から皮膚を守ります。
Q:経過は?
A:症状が軽い場合は、保湿剤のみの処方をします。炎症は適切な薬を使用すれば1~2週間で改善されますが、生活習慣を変えなければ、再発を繰り返すことになります。
Q:日常の注意点は?
A:薬物療法とともに、手の保湿・保護をするために以下のような生活改善も行いましょう。
- 水仕事はゴム手袋をして行い、さらにゴムの刺激から皮膚を守るために、その下に木綿の手袋をする。
- 水仕事で使うお湯の温度をぬるめ(体温よりやや低い温度)にする。
- 洗濯物を干したり、布団を上げ下げしたり、掃除機をかけるときなど、水仕事以外の家事でも、木綿の手袋をする。
- シャンプー、ボディソープ、石けん、ハンドソープなどは低刺激性のものを選ぶ。
- 水仕事の後や、手を洗った後、入浴後などは、時間をおかずに、早めにハンドクリームを塗る。
- 肌寒い日や乾燥している日は手袋をして外出する。
- 夜寝る時には保湿剤をたっぷりと手に塗り、さらに木綿の手袋をする。
痒疹
とても痒い赤茶色の丘疹(皮膚の盛り上がり)が散らばるように生じる疾患です。スネのあたりやお腹まわりに限られるものから、体じゅうにできるものまで、タイプはいろいろです。また、丘疹は1週間程度で治ってしまうものから、何ヶ月も治らずに茶色の硬い「いぼ」のようになってしまう慢性のものまであります。
Q:原因は?
A:今のところ原因ははっきりとは、わかっていません。虫さされやアトピー性皮膚炎のようなアレルギー、内服薬が関係しているケースもあります。長い間、引っ掻き続けてしまうことも一因になっていると考えられています。
Q:検査は必要ですか?
A:検査は必須ではありません。痒疹では、一般的な血液検査をしても異常の無いことがしばしばです。しかし、中高年以上で症状がひどい方の場合には、何らかの内臓疾患と関連していることがあります。たとえば糖尿病や透析を受けている方には痒疹がよくみられます。ホルモン異常、肝臓・胆道系の異常、血液疾患、悪性腫瘍、金属アレルギーなどが隠れているケースもあります。このように誘因は人それぞれですので、いろいろな検査を重ねながら問題を探していきます。しかし詳しい検査をしても、何も見つからないこともあります。
Q:治療は?
A:治療にはステロイド外用薬と、痒みに対する抗ヒスタミン薬が用いられます。体じゅうに症状がある場合には紫外線療法を行うことがあり、痒みにもよく効きます。当院では紫外線療法も含めて上記すべての治療を受けることができます。いままで外用等だけで改善が見込めなかった方は、ぜひご相談ください。
薬疹
薬疹とは、治療で用いた飲み薬や注射薬、市販薬やサプリメントなどでアレルギーを起こし、皮膚に様々な症状が現れる疾患です。ほとんどのケースで、薬に対する免疫反応が原因です。
Q:薬疹はいつから出現するの?
A:薬を使用してから過敏反応を起こすようになるまでには、ある程度の期間が必要です。期間は様々ですが、多くは原因薬剤を内服してから2~3週間後に発症します。中にはもっと長期間を経てから発症する場合もあるため、これまで使用していて何も問題が生じなかった薬で薬疹になることが少なくないのです。
Q:薬疹の症状や注意点は?
A:薬疹では、様々な発疹が現れるので、他の皮膚疾患と薬疹を区別するのは、実はかなり困難です。従って、患者さまの薬剤服用歴がかなり重要になります。また、薬疹は重症化すると死に至るケースもあり、軽視は禁物です。特に重症化しやすいのは口の中や目のまわり、外陰部などに発疹が現れたケースです。また、水ぶくれが生じた場合や、二重の輪郭を示す紅斑が生じた場合も、重症化する傾向があります。
薬疹を発症してから原因となる薬剤の使用を中止しても、一度改善してから再び重症化するケースもあるので、油断はできません。重症化すると、肝機能障害や薬剤性過敏症症候群などを引き起こして、最悪は生命さえ脅かしかねません。
Q:治療は?
A:治療としては、まず原因となっている薬剤の使用を中止して、抗アレルギー薬内服などを開始します。しかし、前記のとおり、薬剤中止で一度は症状が改善しても、再び重症化するケースがあります。その際は、ステロイドの内服・注射による治療が必要になります。薬疹が疑われる場合には、必ず医師に相談し、指示を仰いで、治療と再発防止をしましょう。